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「テキストのための舞台装置」を開発しました

政治経済勉強会で利用したい

こんにちは、株式会社ダラフの斉脇です。
この度 Tparty という「Discord を利用した政治経済勉強会」で利用するウェブシステムを開発しました🎉
テキストのための舞台装置」というコンセプトで、活字をいい感じに見せるためのシステムです。

この政治経済勉強会では、第1,3月曜日に「チャンネルマガジン」を発行し、毎週水曜日に「チャンネルニュース」を発行しています。チャンネルマガジンは、勉強会の管理人が編集者としてメンバー3人を指名し、それぞれが約1万字を執筆のうえ、編集者と約1時間ほどトークをする形式をとっています。つまり、1号あたり約3万字のテキストと、3時間のトークが収録されているリレーブログのようなものです。チャンネルニュースは、管理人がその週のニュース記事を3つほどピックアップし、記事それぞれについて約1,000文字のテキストと、約10分の音声を収録しています。簡単に言えば、メルマガを Discord ベースで発行しているという感じです (なのでチャンネルマガジンと呼ばれています)。

マガジンについては、テーマは自由ですが、編集者がレビューする形で作っています。特徴は、テキストに対して必ずトークを収録している点です。以下が、マガジンのタイトル例です。

  • SNSは死んだ。思えば、僕たちは差し出し続けてきた
  • 地域・農業スタートアップの半解体新書
  • オミクロン真っ最中のフランス・ベルギーに飛んでみた
  • ネット系スタートアップの過去と未来
  • チリは南米の優等生か
  • 花の美しさは存在するか
  • セクシュアリティ・イン・ザ・ウッズ
  • シティボーイと呼べない東京育ちのリアル
  • 翻訳者になって初めて知ったこと
  • 中小企業の強化が、日本を救う ~とある事業承継準備の記録~
  • 美術展のキャプションに書いてあること、書いていないこと

執筆体験から考えたこと

私も一参加者としてチャンネルマガジンの執筆および音声収録を体験しましたが、とても有意義な体験でした。編集者とは PDF にハイライトおよびコメントをしてもらうことでコミュニケーションをとりました。また、知人の参加者にも事前に読んでもらい、同様の方法で感想をもらいました。

PDF なのでやりとりに限界はありましたが、良いと思った部分にハイライトをしてもらったり、コメントをしてもらうのは嬉しいものだと感じました。知り合い同士でクローズドにやっていたので不快なコメントがなかったというのもあると思います。ただ、近年のソーシャルメディア、ニュースサイト、ブックマークサイトのコメントに見慣れていたので、有意義なコメントに驚いたというのもありました。

逆に私が知人のレビューをする機会もありました。PDF ではできなかったのですが、やはりハイライトした上で、絵文字やスタンプを送れるようにしたいし、ハイライト箇所をベースに質疑応答ができるようにしたいと思いました。コンテンツ自体も良いのですが、コンテンツからコミュニケーションにつながるようにしたいと思いました。

この体験からいくつかのやってみたいアイデアを想起しました。ひとつは、ライブ動画のように投げ銭できないかというもの。ハイライトした上で、拍手👏のエフェクトを SHOWROOM のように送ることができないかというものです。さらに、ハイライトした上で、ポイントを付与して質問する。その質問に著者が回答した場合に、ポイントが支払われる仕組みです。これは、Stack Overflow の Bounty (懸賞金) という機能に類似しています。また、リアリティショーのように、編集過程自体を公開し、テキストが編集されていく様子をエンタメにできないかとも考えました。著者に対して有望だと思ったら編集者や校正者のように振る舞うことができ、その著者が有名になった場合にインセンティブが支払われるような仕組みも面白いでしょう。

当然このような思いつきのアイデアは誰か他の人が考えているもので、Google で検索すると出てきます。

約15年前に株式会社はてな創業者の近藤淳也氏のブログに同じようなアイデアが書かれています。
ブログ作者に投げ銭を - jkondoの日記

また、リアリティショーのように編集過程を公開するのは、おそらくはプロセス・エコノミーなのでしょう。
「プロセス・エコノミー」が来そうな予感です|けんすう

言文一致と日本語の条件

管理人の方に聞いたところ、チャンネルマガジンの号を重ねるごとにフィードバックが集まってきており、ある感想が目立つようになったそうです。その感想は「トークがいい」というものでした。ある読者の方は、最初にトークを聞いて、人柄を知った上でテキストを読むそうです。そうすると自然とテキストが読みやすくなるということでした。

この話を聞いて、7年ほど前の、大澤聡氏と東浩紀氏のトークショーを思い起こしました。このトークショーの 1:35:00 から約20分間、言文一致についての話があります。そこで東氏は、英語などの言語と違い、日本語は書き言葉と話し言葉でモードが異なり、2つの言語を扱っていると考えるべきだと展開します。そして、書き言葉と話し言葉という二つの全く違う言語の中でできた伝統をどのように引き継いでいくかという問いに着地します。チャンネルマガジンは、このような日本語の条件のなかでの取り組みだと考えられるのではないでしょうか。

有料ですが、面白いトークショーなのでぜひ見てみてください。
Watch 20150206_大澤聡+東浩紀 Online | Vimeo On Demand on Vimeo

もう一つが、小林秀雄の以下の一節です。

人間は、その音声によって判断出来る、又それが一番確かだ、誰もが同じ意味の言葉を喋るが、喋る声の調子の差違は如何ともし難く、そこだけがその人の人格に関係して、本当の意味を現す、この調子が自在に捕えられる様になると、人間的な思想とは即ちそれを言う調子である

小林秀雄「年齢」

「年齢」という作品のなかで、小林は本居宣長を引きつつ、書かれた歴史より話された歴史にこそ大事があると語り、話し言葉を重く見る小林の言語観が言明されます。

システムコンセプト

以上のような背景から開発し、以下の2点をコア機能にして設計しました。

  • ArticlePlayer : 記事 + 「トーク、ハイライト、コイン」
  • with Discord : Discord API, Bot, OAuth 2.0

ArticlePlayer

ArticlePlayer は主に3つの機能から構成されています。

  1. トーク
  2. ハイライト
  3. コイン

(1) トークですが、こちらは音声データ (mp3) の再生機能です。Podcast サービスとほぼ同様です。再生位置の保存、特定の再生位置へのコメント (これはニコニコ動画などに類似) などをサポートしています。

(2) ハイライトですが、文字通りテキストに対してマークすることができます。一番わかりやすい先行例は、Medium だと思います。ハイライトを中心に、コメントしたり、質疑応答したりすることができるようにしました。

How Highlights on Medium changed publishing forever | Productboard

(3) コインですが、ギフトまたはバウンティとして送ることができます。ギフトでは、拍手👏 などのいくつかのアニメーションを送ることができます。絵文字やスタンプなどと同様のものです。バウンティは、YouTube ライブでのスパチャによる AMA のようなイメージです。コメントに対して、質問したりより詳細な説明をリクエストすることができます。

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with Discord

Tparty では、Discord をベースにしていることもあり、Discord の OAuth2 での認証にしています。

また、管理人の友人ベースでスタートしたこともあり、招待管理として Discord アカウントと実名の紐付けが必要な点。

通知やコメント連動などは、Discord と接続しています。

今回の開発から、Discord API についての知見を得ることができたので、Discord に関連する開発案件については是非お問合せください。

ビジネスモデル

まず断っておきたいのが、Tparty のために、システムを作りましたが、開発費用を受け取っているわけではありません。ダラフ社として、システムを企画・所有・運営しており、Tparty にはシステムをライセンスしています。なので、売上は Tparty からのライセンス料になります。Tparty 自体のビジネスモデルについては、Tparty のサイトに説明を譲ります。

  • Tparty : コミュニティであり、政治経済勉強会
  • ダラフ : システム提供している会社

ダラフとしては、今後のビジネスモデルについていくつか考えています。

  1. Tparty と同じことをしたいコミュニティに提供
  2. 既存のウェブメディアやブログサイトに埋め込めるような形での提供
  3. カスタマイズ開発案件をメディア会社に提供
  4. 新しいオープンプラットフォームとして公開

(1) については、現状だと Discord を利用していることが条件になりますが、可能だと思っています。コミュニティの運営において、情報発信は常に課題であり、コミュニティ内のコミュニケーションを促進することは重要です。システムとしては、サーバーを共有する SaaS 形式なのか、サーバーを分離するコンテナ形式なのかが選択肢かなと思っています。SaaS 形式で提供できた場合、SubstackShopify のような展開が想定できるかもしれません。

(2) については、先行する例として、Disquscodoc があります。codoc は WordPress のプラグインとして提供されており、ブログサイトに読み込むことが容易にできます。npm でパッケージを公開しつつ、ハイライトやコメント保存のデータベース部分で課金する形かなと思います。

(3) については、既存のウェブメディア、出版、雑誌、新聞などに対して、既存顧客基盤 (認証) の仕組みを調整した上で提供する方法です。こちらは開発案件のため、おそらく初期費用が発生してしまいますが、オープンメディアからクローズドメディアという流れの中で、コミュニティを作り、ロイヤリティの高い読者を育てるという点で有効性を示すことはできると思います。

(4) については、おそらくやりませんが選択肢の一つかとは思います。消極的な理由は noteMedium があるなかでやる意味があるのか疑問な点と、そもそも現在の炎上文化やポリティカル・コレクトネスにおいて、オープンなテキストプラットフォームを運営することの困難さがあります。Deep Learning を活用して機械的にパトロールをすることも可能なのかもしれませんが、昨今の言論の複雑さは、機械的な複雑さよりも、政治的な複雑さのように感じます。軍事行動の可否も、フェイクニュースも、陰謀論も、オカルトやスピリチュアルも、どこまでがヘイトで、どこまでが言論の自由なのか判断することは困難です。一つの記事に削除申請や内容証明が届くたびに、運営本体がどちらの陣営なのか評価されることは長期的な運営において厳しいと感じています。

つらつらと書きましたが、現状ビジネスモデルは未定というのが正直なところになっています。かなりフラットにビジネスパートナー含めて募集しておりますので、ご興味ある方がいましたら、ご連絡いただけたら嬉しいです🙇‍♂️

ビジョンと今後

勉強会で利用するシステムとして作ったという背景がある通り、コミュニティをより良くするシステムになるといいなと思っています。なので、自然と想定顧客は、コミュニティマネージャーなのかなと思ったりもします。また、言文一致の箇所の話にも近いのですが、開発者である私自身が長文テキストサイトが好きなこともあり、面白くて勉強になるテキストが増えて、著者にお金が還元される仕組みが作れると最高だなとは思っています。2022年現在は、動画は儲かるが、活字は儲からないという感じに見えるので、ライバー並みにライターが儲かるシステムに成長させることができれば本望かなと思っております。

今後も開発する中で考えたことについて書いてみたいと思っています。
最後に予定しているテキストのタイトル案。

  • Podcast の物足りなさは、ライブでの作家とハガキ職人が不在な点
  • Discord の主従逆転が露呈する NFT コミュニティ (主:ゲーム / 従:Discord からの転換)
  • ルッキズムやねこ動画に対抗するために「テキスト+音声」はどうか
禅モード