プロトタイピング道場 (以下「道場」) の参加者である山本さんに、リリースまでの流れをインタビューしました。また、CTOの本田さんにも同席いただきお話を伺いました。AI-CON (アイコン) は、プロトタイピング道場で初期のプロトタイプ構築を支援させていただきました。
リリース時のニュース 現役弁護士が手がけるAI契約書レビューサービス「AI-CON」正式公開、ランサーズとも連携 | TechCrunch Japan
斉脇: 本日はありがとうございます。さっそくですが、サービスの説明からお願いします
山本: AI-CON (AIとCONTRACTとが結びついた名称です)は、契約書リスク判定サービスです。
斉脇: 道場で、プロトタイプを作ったのが17年2月だと思うのですが、その後はどのように進まれたんですか?
山本: プロトタイプはあったのですが、3月に知り合いの開発会社に、改めて詳細な要件定義をお願いしました。30ページぐらいパワポを作ってもらった感じです。
斉脇: なるほど。
山本: それで、開発先どうするんだとなりました (笑) 知り合いに、紹介してもらったりしながら、エンジニアの方ともお話したのですが、結局どこかの会社に外注しようということになりました。どこの会社に外注するかどうかの選定と見積もり交渉を2ヶ月くらいやってました。
斉脇: 結構大変ですね。
山本: 条件がまとまった上で、6月ぐらいからスタートしたのですが、再び要件定義をすることになってしまい、結局90ページぐらいのパワポの要件定義書を作りました。その作業を、7月いっぱいまでやっていた感じです。今振り返ると、ここらをもう少し短縮できたのではないかと思います。とにかくそんな感じで結局8月から実装は開始されました。契約書をレビューしてもらう顧客側が9月中旬、弁護士側が10月中旬を納期に開発してもらっていました。
斉脇: なるほど。
山本: 実は、その開発会社に外注する一方で、自社でも採用活動をしていて、CTOの本田を9月の頭に採用しました。最初は、本田にはエンジニアの採用を担当してもらっていました。
斉脇: あっそうだったんですね。本田さんとの出会いは後で詳しくお聞きしたいと思います。それでどうされたんですか?
山本: 9月中旬で納品後、本田とも話した結果、本格的に内製化を進めることにしました。10月頭にフルタイム1人とパートタイム2人のエンジニアがジョインすることが決まっていたので、内製チームで直してリリースしようという話になりました。
斉脇: そのタイミングで外注から内製に切り替わるんですね。
山本: そうです。そこからどうにか年内にリリースしようということで、内製チームでの開発が10月頭からスタートしました。とにかくスピードを優先して、11~12月の2ヶ月限定でセキュリティやインフラなどをチェックしてもらう方に来てもらったりもしました。
斉脇: コード自体は捨てて書き直したんですか?
本田: いえ。納品されたコードは捨てずに、修正していくという方針にしました。前職でリプレイスを数回やった経験もあったので、どうにかなるだろうと思い、リライトしていく感じにしました。また、パートタイムのエンジニアの方がめちゃくちゃモチベーションが高く、本業があるにも関わらず月120時間ぐらい稼働してくれてどうにかなりました。
山本: そのあとは、11月にクローズドβ版をリリース、1月にオープンβ版をリリースしました。オープンβ版からUI/UXの改善やLP作成、レコメンド機能などを実装して、2月13日に大きめのバージョンアップをしました。そこから4月16日までに決済機能を実装して、正式公開という感じです。
斉脇: ありがとうございます。聞いていると、本田さんが中心になった内製チームになってからは比較的順調に開発が進んだという感じですね。
斉脇: 山本さんと本田さんの出会いはどんな感じだったのですか?
山本: 自社にエンジニアがいないということで、不安になってきまして。ある方にどうすればいいかと相談をしていたら、たまたま転職活動をしていた本田を紹介してもらいました。7月の下旬ぐらいですかね。
斉脇: 会ってみてどうでしたか?
山本: すごく理解が早い人だとびっくりしました。いままで話したエンジニアと違うというか。1を話して、10を理解してもらえるみたいな感じでした。コミュニケーションの取り具合がよかったんですよね。少ししか話しをしていないのに、話が合うなと思えました。
斉脇: 本田さんはいかがですか?
本田: ちょっと補足しておくと、共通の知り合いで、その紹介した人というのは、元上司の方でした。紹介された時が、ちょうど転職活動をしていたタイミングで、0->1フェーズのスタートアップのCTOをやりたいと思っていました。
斉脇: ありがとうございます。話してみていかがでしたか?
本田: 不思議な感じでした。まず、弁護士のイメージとして、こういうことをやるイメージもなかったですし、しかも、自分の食い扶持を減らすようなことをやろうとしていたので、ちょっと意味がわからないというか、不思議だなと。
斉脇: まぁ、そうですよね。
本田: しかも、実際にお金を使って外注していたのでめちゃくちゃ本気でやっているなと。全然片手間じゃないなと思いました。話をしてみて、サービスのビジョンもしっかりしていたので、いいなと思いました。
斉脇: 7月下旬で話して、9月頭から稼働しているので結構すぐだったと思うのですが、山本さんは特に迷わず採用することにしたんですか?
山本: 採用するということは最初から結論は決まっていたと思います。本田とは一緒に成長できそうだと思っていましたし、ぜひ一緒にやりたいと思っていたので。
斉脇: 本田さんはジョインしていかがですか?
本田: 前職も開発リーダーはやっていたのですが、組織を作る、全責任で採用をやるなどを本格的にやってみて大変だなと思っています。スカウトから、面接、給料交渉まで全部自分でやっているので、言い訳できないというか、そこが大変であり、やりがいがあるなと思っています。
斉脇: 現在の開発チームはどのような構成ですか?
本田: フルタイムだと私も含めて、エンジニア3名、デザイナー1名の4名です。CakePHP や Vue.js、 jQuery を使って開発をしています。私が、インフラやパフォーマンス面などを見ていて、1人が弁護士側、1人が顧客側を実装しています。
斉脇: サーバーサイド、クライアントサイドみたいな分け方じゃないんですね。
本田: そうですね。3人とも全部できるなかで、それぞれ担当しているという感じです。
山本: 採用としてサービス志向が強い人というのを重視している影響もあると思います。
斉脇: パートタイムの方もいますか?
本田: はい、フルタイムとパートタイムで13人ほどいます。
斉脇: すでに結構な開発チームという感じですね。どのように開発は管理されているのですか?
本田: 山本も含めて、週2回、1時間ほど、ミーティングをしています。フルタイムのメンバーが参加しています。現状共有や事業の展開などについて話し合ったりします。あとは、GitHub Issues でタスクは管理し、Slack でコミュニケーションを取っています。
斉脇: 法律系サービスなので専門知識も必要だと思うのですが、その辺はいかがですか?
本田: 難しいのは難しいと思います。ただ、技術的な意味ではWEBサービスなので、あまり問題ありません。リリースして、反響も大きいので、求められているんだなとやりがいを感じています。チームも社会的意義があるサービスということで、面白がってやってくれています。
斉脇: プロダクトの意思決定は誰がやられているのですか?
本田: プロダクトのビジョンは山本が持っているので、山本が最終的には意思決定をしています。技術的なところは私と話し合って決めています。デザインやUI/UXなどの部分は、CDOがいるのでそちらと話し合って決めています。
斉脇: うまく分担されていて素晴らしいですね。ビジネスサイドは山本さん1人なんですか?
山本: そうですね。ただ、裏で弁護士が関わるサービスなのでGVA法律事務所の人間が関わっていますね。実質、カスタマーサクセスは法律事務所でやっているような感じになっています。
斉脇: 法律事務所の方からは、文句言われないんですか? (笑)
山本: めちゃくちゃ反対でしたよ。狂気の沙汰じゃないと言われています(笑)
斉脇: 資金調達はどんな感じですか?
山本: エンジェルラウンドとして6,500万円ほど調達しています。
斉脇: 開発予算として使っている感じですか?
山本: はい。開発のスピードをとにかく最優先しているので、多少お金がかかってもスピード感をもって開発をしていければと思っています。
斉脇: 開発チームの採用もガンガンやられていてすごいなと思います!
斉脇: CloudSign、DocuSign、Adobe Signなどの電子契約サービスはじめ、リーガルテックも色々なサービスがあると思うのですが、どのように現状をみていますか?
山本: 契約書は、作成、レビュー、編集、署名、管理などの流れがあります。AI-CON はレビューの部分としてリスク判定をするサービスです。うちは作成、レビュー、編集をやっていきたいと思っています。
斉脇: 少し話が飛んでしまうかもしれませんが、AI や Blockchain についてはいかがですか? 2030年ぐらいに向けてどのように変化していくとお考えですか?
山本: AIに関しては、とにかくデータを集めることが大切だと思います。また、漠然とデータを集めるというよりも、整理された状態でデータを集めるというのが大切だと思っています。いままで、契約書のリスクを定量化してきませんでしたが、今後はAIを活用してどんどん定量化されていくと思います。
斉脇: 定量化がポイントなんですね。
山本: また、今後はいわゆる信用経済がもっと大きくなると思います。そうなったときの契約がどうなるのかを考えています。たとえば、この契約書のリスクは高いけど、特定の個人の信用情報が高いから問題ないなどの評価ができるようになると思います。
斉脇: 信用経済などの文脈につながっていくんですね。
山本: はい。とりあえず、いまは AI-CON をどんどん利用してほしいなと思っていますので、よろしくお願いします。
斉脇: 本日はありがとうございました。
山本: ありがとうございました。