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在宅診療を行っているクリニックに対して地域の看護師をマッチングするサービス
木崎
インタビュー

株式会社コメッド 木﨑さんインタビュー

2020年5月12日
参加者インタビュー
木崎さん

株式会社コメッド 木﨑さんインタビュー

株式会社コメッド 代表取締役 木﨑淳一郎さん (以下、敬称略) にお話を伺いました。Codebot のお客様の雰囲気が伝わればと持ってインタビューさせていただいております。インタビューとともに、ヘルスケア領域のサービスについての理解の助けになればと思います。

Codebot では、コメッドのHPリニューアルのコーディングを担当しました (デザインファイルを受け取り、コーディングファイルを納品)。

会社とサービスについて

運営: 現在どのような事業を行なっているのですか?

木崎: オンラインでの健康相談サービスをやっています。新型コロナウィルスで注目されているような遠隔医療 (診察)ではなく、オンラインで健康相談や健康指導をしています。弊社のスタッフは、看護師、保健師、助産師、管理栄養士などの医療資格を持った人たちが中心です。

運営: 医師がオンライン診断をして処方箋を出すものとは違うということですね?

木崎: そうです。医師以外の医療職の方が、日々の健康サポートをしています。

運営: どんな方がお客さんなんですか?

木崎: 個人向け (toC) だと妊産婦さん、法人向け (toB) だと成人の健康指導が必要な方たちが中心です。

toB 向けサービス

運営: 健康指導といいますと?

木崎: いわゆるメタボの方向けの健康指導です。40歳以上の方は年に一回「特定健診」というメタボチェックの健診を受けることができます。その健診でメタボという結果が出ると、「特定保健指導」という生活習慣の改善プログラムを受けることになります。厚生労働省が生活習慣病予防の事業として行っていて、健康保険組合が費用を負担して行うものです。

(参考) 厚生労働省 : 特定健診・特定保健指導について

運営: なるほど。

木崎: この特定保健指導というのは、会社が加入している健康保険組合が手配することになります。近くの健診センターでの実施や、事業者が会社へ訪問するなどして対面式で面談し、健診結果の理解や生活習慣の改善策について話し合ったうえで目標を立て、その後の進捗についてメール・電話・手紙などでアドバイスをして、というようなことをやります。弊社の場合、その全てのプロセスを LINE で行うサービスを提供しています。既存のプログラムの多くが月1回程度のコミュニケーションでしたが、LINEならの高い頻度でやり取りできるので、モチベーションの維持に繋がります。

運営: 健康保険組合の方は、全国などに社員が散らばっていたりすると手配が手間だったりしますよね。

木崎: オンラインならそういった手間暇も必要ないので、非常にスムーズにできます。また、コロナウィルスの影響で対面が難しくなっているので、必要性が増してきていると思います。

運営: 健康保険組合の事務コストを減らしつつ、エンドユーザーも手軽になり、さらにコミュニケーションがこまめになるので効果も出やすいということですね。

木崎: そうです。伴走型サービスをコンセプトに提供しているので、LINE を使って小まめにケアできることを強みにしています。チャットもそうですが、LINE ならビデオ電話もできるのでそれらの機能を活用しています。

運営: ビジネスモデルでいうとどんな感じになるんですか?

木崎: BtoBtoCモデルで、健康保険組合が費用を負担して個人にサービス提供する形式です。なので、全国の健康保険組合が営業先になっています。QR コード付きのパンフレットから申し込みできるような仕組みを提供し、提携先の組合に誘導してもらうという流れです。

運営: 人事部の福利厚生がどうとかではなく、会社が加入している組合が営業先なんですね。

木崎: 競合もいますが、LINE のチャットとビデオを中心に、改善記録は写真で共有などの手軽さで利用が広がっています。個別にアプリをインストールする手間もありません。そもそも新しいアプリを覚えてもらったり、高度なことをお願いするのはハードルが高いので。

運営: (1) 健康保険組合へ営業と、(2) 医療職の採用・研修含めたオペレーション構築、この両面が業務という感じですね。

木崎: 特定保健指導の経験者を採用していますが、オンラインでどのように対象者に接するか、指導の効果を出していくかなど研修が必要になります。研修を丁寧にやることで指導の質があがり、顧客である健康保険組合からの評価が営業に繋がります。

運営: 京都を中心に営業していますよね。

木崎: 現在は営業は京阪神を中心に行っています。ただし、今後規模が拡大しても、医療職はリモートでの対応になるので場所に捕らわれる必要はありません。研修もオンラインでできるようにマニュアル作成などを積極的に行なっています。

運営: 医療職の方々は自宅でできるという点も今っぽくていいですね。

木崎: 健康に関する専門的な知識と、オンラインで質を担保するためのノウハウが必要という意味では、いわゆる一般的なクラウドソーシングサービスでは難しい領域なので、そういったサービスは競合になりづらいと思います。研修体制を丁寧に構築することで、安定したサービス提供が可能になるので、そこの部分のノウハウを蓄積していっている状態です。

toC 向けサービス

運営: 木崎さんとの出会いは、2017年9月ごろにプロトタイピング道場でご協力させていただいたのが最初だったと思いますが、その時は toC 向けサービスでマッチングサービスっぽい感じでしたよね。

木崎: そうですね。会社の創業前後だったと思います。結局システムは構築していませんが、やっていることは、あまり変わっていないといえば変わっていないかもしれないですね。妊産婦さん向けで、toC 向けサービスも継続的に提供しているので。

運営: 組合向けのサービスはその後出てきたのですか?

木崎: 1年間ほど、toC 向けのみでやっていたのですが、それだけだと利益面でなかなか大変でした。toC 向けは、初期のマーケティングコストが大きいのと、利益になるまで時間軸が長い。足元の売り上げを作っていくということで、法人向けのサービスを始めました。法人向けサービスであれば、営業コストはかかりますが、マーケティングコストはかからないですし、基本的にストック型で積み上がっていきます。

運営: 妊産婦さん向けの相談サービスのご説明もお願いしてもいいですか。

木崎: 妊娠期間と出産後の期間で、最大2年ほどの期間を中心に、各種相談に乗っています。病院に行って相談するほどでは無いし、病気ではないが、心配事がたくさん出てくるので、それらに応えています。例えば、授乳の量や頻度はどうすれば良いか、赤ちゃんのスキンケアはどうすればよいか、離乳食はどう進めていけばよいかなど。1ヶ月単位でご利用いただいています。

運営: 気軽に相談できるのでいいですよね。

木崎: こちらも、LINE で対応していて、伴走型がテーマです。1週間後に、その後どうですか? などのフォローを入れる形で運営しています。

運営: 大変なところはどこらへんですか?

木崎: 質の担保と立ち位置です。チャットでも相談者の事情をくみ取りながら、適切なアドバイスを提供していく必要があります。また、弊社のサービスで全てを解決するわけではなく、地域の産婦人科や行政サービスの利用を勧めることでリアルなサポートを受けるためのお手伝いをしています。

運営: 妊産婦向けサービスも継続していくんですよね?

木崎: 現在は妊産婦さんが中心ですが、女性向け全体に拡大していくことも考えています。女性の健康問題はライフステージや年齢で色々変化しますので、それらに対応できればと思っています。

開発について

運営: 先ほどの少し話題に出しましたが、プロトタイピング道場で作ったものは本番開発しなかったのですね?

木崎: 最初はプロトタイピング道場後に、自社開発してアプリをリリースすればいいと思っていました。ただ手伝ってもらっているエンジニアの方と、それで作ったとしてだれがダウンロードしてくれるのか? マーケティングの費用などどうするのか? などなどと話しているなかで認識を改めていきました。

運営: 非常に英断ですね。

木崎: とりあえず、toC 向けのアプリではなく、LINE で顧客対応することにしたので、LINE でログインしてもらいつつ、医療職の方が対応できるような、いわゆる CRM っぽい仕組みを構築し、そこから事業をスタートしました。

運営: 素晴らしいですね。本当に必要な部分だけにエンジニアリングを使ったんですね。

木崎: 起業して、自分で事業をしていて学んだことですね。あと、いわゆる起業のセオリー的なやつで、ニッチから始めるみたいなのがあるじゃないですか。それに当てはめると、toC 向けで掘られていないニッチを探してとなります。妊産婦向けで、さらに授乳に特化したなどとやっていくと思うんですよね。ただ、これもなかなか難しいなと思っていて、そもそも収益的にもそうですし、ニッチにスタートしてカテゴリーを増やしてと考えているとオペレーションの構築もなかなか進まない。そのニッチを突き詰めていってもなかなか発展するのか疑問で。ここら辺の温度感はやりながら調整してきた感じですね。

運営: 難しいですよね。

木崎: 結局、お客はだれか? お金払うのだれか? ってところだと思いましたね。

運営: ちなみに、今回 HP のリニューアルはなぜ弊社に? HPのコーディングだと2回目ですよね。

木崎: 安くて速いからですね。デザイナーの知り合いはいたので、コーディングのみに対応してもらえる先として選びました。プログラマーにお願いする内容とも違うので、ちょうどよかったという感じです。

今後について

運営: 成長資金の利用などの想定はあるんですか?

木崎: toB 向けの事業が安定している前提ですが、toC 向けの事業はアクセルを踏む必要があるので、どこかのタイミングで考えています。やはり、マーケティング費用がかかるものだと思いますので。

運営: システム開発ももう少し後ですかね?

木崎: はい。システムよりも、研修含めたオペレーション体制の構築ですね。その先にシステム化があるという感じで考えています。

運営: 今後についてはいかがですか?

木崎: 今まで通り、「医療と日常の溝を埋めていける」ような事業を行なっていきたいと思っています。現在の事業を広げていくのがここから1~2年だと思いますが、もっと医療側にも入っていきたいと思っています。一次相談を受けつつ、その情報を元にクリニックなどと連携するなどして、医療側とのコミュニケーションをより日常的に、普段からやるものに変えていきたいです。

後述

国内外で俄然注目が集まるヘルスケア領域ですが、木崎さんの話を聞いていて色々な参入切り口があるなと勉強になりました。エムスリー (製薬会社と医師が中心) や メドレー (医療領域の人材採用が中心) のような企業が目立ちますが、健康保険組合向けなどの領域も非常に面白いと思いました。そもそも、医療・介護領域は保険点数ビジネスの側面が強いので、そういった商流に合わせる方が自然だと感じました。

Zoom飲みが流行する中で、オンライン相談などがより身近になっていくと思います。cotree などのオンラインカウンセリングサービスも成長していると聞きます。時代性にもあい、かつ購入から集金までのフローも綺麗なビジネスでありながら、オペレーション構築に経営力が必要な事業なので参入障壁も高いように感じました。

HP コーディングのお手伝いという、かなり部分的なサポートでしたが、ご一緒させていただけて良かったと思います。関係者の皆様ありがとうございました。