プロトタイピング道場 (以下「道場」) の参加者である栗島さんに、リリースまでの流れをインタビューしました。StartupList (スタートアップリスト) は、プロトタイピング道場で初期のプロトタイプ構築を支援させていただきました。
斉脇: 本日はありがとうございます。簡単に自己紹介の方よろしくお願いします。
栗島: 大学を卒業した後、資産運用の会社で株式トレーダー、債券のファンドマネージャーなどをしていました。その後、クリエーター支援やシェアハウスの運営をやったり、(株)エス・エム・エスの創業者である諸藤さんが運営されている、Vilingベンチャーパートナーズで教育系VCをやったりしていました。そのあと現職のプロトスターになります。プロトスターは、前川、栗島の2人で2016年11月に創業した会社です。StarBurst、StartupList、ICO NEWS などを運営しています。
斉脇: StartupList はどんなサービスですか?
栗島: 起業家と投資家がお互いの情報を検索できるサービスです。
斉脇: アメリカのサービスだと、AngelList や Crunchbase などがありますよね。チェックされていますか?
栗島: 正直あまりしてないです。StartupListは、コミュニケーションのプラットフォームです。AngelListは比較的チェックしていますが、Crunchbaseはデータベースという感じなので見ていません。ただ、AngeListを参考にしたいと思っても、アメリカと日本だと起業環境も法律も違うのでなかなか。日本は、金融商品取引法で投資募集の制限もあるので。
斉脇: 中国系はいかがですか?
栗島: 中国系にも同様のサービスはありますが、アメリカ同様、中国とも起業環境が全然違うのであまり参考にならないですね。中国は、起業家も投資家もめちゃくちゃいっぱいいるので。中国系のリサーチを積極的にやったりはしていません。
斉脇: 国ごとに違ってあまり参考にならなさそうですね。
栗島: 競合含めてあまり見ていないというのが正直なところですね。参考になればいいのですが、なかなかそうもいかない部分が多いので。
斉脇: リリースまでのスケジュールを教えてください。
栗島: 2017年の5月ぐらいにプロトタイピング道場に参加しました。なので5月末ぐらいには、プロトタイプが完成している状態でした。6~8月は開発会社を探して、3社ぐらいから見積もりを取ったりしていました。ただ、8月末にたまたまエンジニアの方と知り合い、最終的にはそのフリーランスの方に頼みました。その後、エンジニアの方が本番開発をスタートさせたのが9月上旬です。
斉脇: フリーランスに頼むという形になったんですね。その後は?
栗島: 当初は、9~12月の4ヶ月間で開発して年内にリリースする予定でした。ただ開発が少し遅れて、年明けも継続し、結局2月中旬にリリースすることになりました。年明けは、機能開発もありますが、ランディングページのデザインなどもやっていましたね。リリース時は日本経済新聞に取り上げられたこともあり、多くの方に知ってもらうことができました。3,4月で多くの方に登録して、ご利用していただいている状態です。
斉脇: プロトタイプを作った後、ヒアリングはされたんですか?
栗島: 2017年の6~7月で周りの人にプロトタイプを見てもらったりはしていました。ただ、自分の業務をWEBサービスの形にするというところが大きかったので、あまり積極的にヒアリングをしたりはしなかったですね。
斉脇: 初期のプランから全くブレてないですよね。
栗島: そうですね。繰り返しになりますが、自分が普段やっている起業家と投資家のマッチングをWEBサービスにした感じなので、ユーザーの課題などは明確にわかっていました。なので、迷いなどは全然なかったですね。
斉脇: 事前申し込みは積極的にやれれていましたよね。
栗島: 12月ぐらいから Typeform で事前申し込みを開始し、地道に起業家と投資家に登録してもらいました。事前申し込みを丁寧にやったので、年明けぐらいでリリース前で100社ぐらいには登録してもらっている状況でした。この仕込みもあり、リリース後はスムーズに立ち上げることができたと思います。
斉脇: ローンチ後はどんな感じですか?
栗島: おかげさまで600社ぐらいの方に使っていただけています (2018年05月03日時点)。現在は、ユーザーの意見を元に、改善しています。検索機能、メッセージ機能、通知機能などを中心に直しています。半年ぐらい(18年8月末まで)は、予算上限を決めて、改善を中心にやっていく予定です。
斉脇: あらためて、1年振り返ってどうでしたか?
栗島: 結果的にはなんとかなったって感じですね (笑) サイトとしては現在いわゆる MVP(Minimum Viable Product) になったと思います。ただ、振り返っても改めてMVPの定義というか、必要最小限の定義って難しいなとは思いますね。あと、ランディングページをちゃんと作ってよかったなと思いました。
斉脇: 開発予算ってどこから調達しているのですか?
栗島: 株式での資金調達はしていないので、別事業の売上のなかから予算がついています。
斉脇: 結局、エンジニアの採用はやられなかったんですよね?
栗島: 採用活動自体はあまりやっていないです。一番最初は開発会社に頼むつもりだったので。フリーランスのエンジニアの方とたまたまご縁があったのでラッキーでした。
斉脇: フリーランスの方と開発されていると思うのですが、いかがですか?
栗島: 難しい部分もありますが、コミュニケーションの取り方などを実体験できたので良かったと思っています。
斉脇: 一時期ちょっと大変そうでしたよね。
栗島: はい。なかなかうまくいかないなというタイミングで、斉脇さんにヘルプとして一時的にディレクションをお願いしていました。そこから、Trello を使ってチケット管理や工数管理がうまく回るようになりました。現在は、Trelloを使ってエンジニアとコミュニケーションを取れるようになっているので順調です。
斉脇: 確かに、僕が入ったタイミングではタスク管理もレビュー管理もしていなかったですもんね。
栗島: 今振り返ると、エンジニアにどのように指示をすればいいのかわからなかったと思います。チケットのサイズや優先度の管理、機能や時間の切り方など、どうすればいいのかわかっていませんでした。
斉脇: 最初に入っちゃったほうがよかったですかね?
栗島: そうですね。最初のエンジニアとの打ち合わせで、Trelloにタスクが整理できて、走りだしがうまくいけばもっとスムーズにリリースまでいけたかもと思います。
斉脇: 今後は、どんな機能を予定しているのですか?
栗島: 現在は、起業家と投資家のマッチングサービスですが、その領域を超えていければと思っています。例えば、投資家側のポートフォリオ管理や資産運用、ファンド立ち上げの支援、起業家向けのメンターとのやりとり機能などを実装できればと思っています。
斉脇: 起業家と投資家どちらが優先とかってあるんですか?
栗島: 私たちは、スタートアップエコシステムの構築をやっています。あくまでもインフラなので、どちらが優先とかはないですね。エコシステム構築に向けて、最適な道筋をとっていければと思っています。
斉脇: ビジョンというか、最終的にどんなエコシステムを考えているんですか?
栗島: 日本は、家計の金融資産残高1,800兆以上あると言われています。この資産をスタートアップエコシステムに持ってきたいと思っています。この資産を「池の水」とすると、StartupListは「用水路」だと思っています。ちなみに、スタートアップエコシステムは「土地」、各スタートアップは「種子」だと考えられます。現在は、一部の人しかこの水にアクセスできません。具体的に言えば、VCやエンジェル投資家などです。StartupListで、もっと多くの人が、より効率的に参加できるようになればいいと思っています。そのための、信用チェックなどもやっていく必要があると考えています。より多くの水が流れ、肥沃な大地になり、挑戦者が増えることが理想です。
斉脇: なぜ、そのように考えるようになったのですか?
栗島: 次世代型電動車椅子「WHILL」の創業期を近くで見ていたこと、SXSWなどの雰囲気を知っていたこともあり、スタートアップエコシステムにとても興味がありました。「特定のタイミングに、素晴らしい才能が一箇所に集まり、刺激し合うことで素晴らしい成果を出していく」というのは純粋に素晴らしいなと思っています。
斉脇: ちょっと話が逸れちゃうかもしれませんが、仮想通貨などについてはどのように関係していてくると考えていますか?
栗島: 株式投資型クラウドファンディング、ICOなど色々な動きがあります。スタートアップとの相性に関しては、フェーズごとにそれぞれだと思います。ただ、最初期のスタートアップは、「小さな集団で狂気的にやる必要がある」と思っています。多くの人が関わると熱量が分散してしまいます。また、ステークホルダーが増えると、当然コミュニケーションコストも高くなってしまいます。あと、スタートアップにはお金以外にも知見が必要になるので、プロのお金が必要というのは今後も変わらないと思います。
斉脇: なるほど。
栗島: ICOなど仮想通貨関連については、まだまだこれからだし、法整備次第というのが現状なのかなと思っています。ただ、少し先かもしれませんが、スタートアップエコシステムも大きく影響を受けるとは思います。自分たちでICOをやる可能性も含めて、検討しています。
斉脇: わかりました。本日はありがとうございました。
栗島: ありがとうございました。